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「否認しても有罪」きっぱり言い切る元検事 足利再審(産経新聞)

 【元検事語る(6)】《宇都宮地裁で開かれている足利事件の再審第5回公判。菅家利和さん(63)を取り調べた森川大司・元検事の証人尋問が続く。弁護側の主尋問は、公判途中の平成4年12月7、8日に行われた取り調べに及んでいく》

 《菅家さんの主任弁護人を務める佐藤博史弁護士の厳しい追及は続く。森川元検事は証言台に手を乗せ、時折、記憶をたどるように天井を見上げては、質問に答えていく》

弁護側「菅家さんは(平成4年)12月3日に(宇都宮拘置支所に)戻ってきて、12月22日に第6回公判が予定されてましたね」

森川元検事「記憶が定かじゃありません」

弁護側「12月7日の(取り調べの)目的は、(足利事件ではなく)別件について本当のことを話してほしいということでしたね」

森川元検事「まあ、(テープで)そう言ってるのであれば、そうなんでしょうね」

弁護側「(菅家さんは)12月7日に(松田)真実ちゃん事件(足利事件)を全面否認しましたね」

森川元検事「はい」

弁護側「そのとき、(同年)1月28日の取り調べで、(長谷部)有美ちゃん(昭和59年の女児殺害事件)と(福島)万弥ちゃん事件(54年の女児殺害事件)を否認したけど、真実ちゃん(の事件)は自白したと言ってましたね」

森川元検事「ちょっと分からないですね…。そうなってるんだったら、それでいいです」

 《18年前の取り調べの内容をほとんど覚えていないという森川元検事。「テープでそう言っているなら」と繰り返す森川元検事に、菅家さんがにらむような視線を送る》

弁護側「(平成4年)1月28日に本件(足利事件)について、本当に自白したんですか? 菅家さんは沈黙し続けてましたね? (森川元検事は)有美ちゃん(事件)は否認したけど、真実ちゃん(事件)は自白したと説明してますね。でも、菅家さんは進んで認めてるわけじゃない。最後に『間違いない?』といわれて、『うん』と言ってる」

森川元検事「でも、そのときの態度を見て、(菅家さんが)うなずくことがあったと思います」

弁護側「テープを聞き直して確認したことは?」

森川元検事「記憶ないですね。(宇都宮)拘置支所での取り調べが工事でうるさかったので、ちゃんと録れてるかなと聞いたことはあります。でも、どのテープか分からないけど」

弁護側「1月28日の出来事は本当にそうだったか、確認しましたか?」

森川元検事「確認はしてないけど…」

 《佐藤弁護士の質問はますます熱を帯びてくる。証人尋問はいよいよ、菅家さんが全面否認に転じた平成4年12月7日の取り調べの核心に迫る。森川元検事もたじろぐことなく、佐藤弁護士の方に体を向け、堂々と質問に答えていく》

弁護側「12月7日の否認は調書にしてませんね?」

森川元検事「うーん。別にメモ取ったか。ちょっと分かりません」

弁護側「テープに録音したから、調書にしてないんですか?」

森川元検事「そういうわけではありません」

弁護側「(菅家さんの否認を)検事正や次席検事に報告しましたか?」

森川元検事「概括的な報告はしました」

弁護側「全面的に否認したと?」

森川元検事「ええ、まあ」

弁護側「誰にですか?」

森川元検事「次席検事に」

弁護側「検事正には?」

森川元検事「してません」

弁護側「12月7日のテープは、次席検事に渡しましたか?」

森川元検事「テープは私の独断で録ったもので、私の手元で保管していました」

 《佐藤弁護士の執拗(しつよう)な質問にいらだっているのか、森川元検事の声が次第に大きくなっていく。それに負けじと、佐藤弁護士も傍聴席によく通る大きな声で質問を続ける》

弁護側「(平成4年)12月8日の取り調べは、起訴後の取り調べとなり、違法ですね?」

森川元検事「ケース・バイ・ケースだと思いますけど」

弁護側「12月7日の否認は虚偽と判断したわけですね?」

森川元検事「はい。そう判断して、(12月)8日に取り調べたわけです」

弁護側「8日に『君と同じ体液を持つ人が、何人いると思っているの?』とDNA型鑑定を持ち出して追及してますね」

森川元検事「ちょっと、私、DNA型鑑定なんて言葉使いましたかね。そう書いてあるなら、そういうことで」

弁護側「当時、(DNA型が一致する人が栃木県)足利市内に50人いたという認識ありましたか?」

森川元検事「可能性としてありうるなと思っていました。それくらいは考えていたと思います。記憶が定かじゃないですが」

弁護側「本件ですが、自白がなくても、有罪にできる事件でしたか?」

森川元検事「捜査というものは、その過程で資料を収集するんです。否認しても起訴はできる。否認しても有罪だと私は思ってました」

 《否認しても有罪-。森川元検事はためらいもなく、きっぱりとそう言い切った。弁護人席で黙ってやりとりを聞いていた菅家さんは、森川元検事をじっと見つめたまま、大きく一度ため息をついた》

 =(7)に続く

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